製麺所のカタログには、「中太ストレート」「多加水」「準強力粉使用」といった言葉が並んでいる。なんとなく選んで使ってきたけれど、スープとの相性が今ひとつしっくりこない。次の麺を選ぼうにも、何を基準に比べればいいのかがわからない。
中華麺の食感や色や香りは、ほとんどが加水率、かんすい、小麦粉の3つで決まります。製麺機メーカーの大成機械工業が、3つの要素がそれぞれ麺に何をしているのかを仕組みから説明し、スープに合う麺を考えるための組み合わせ方をまとめました。仕入れ麺を選ぶときにも、自家製麺を考えるときにも使える基礎知識です。
中華麺を決める3つの要素は、次のとおりです。
- 加水率:小麦粉に対する水の割合。食感の硬さと、スープの吸いやすさを決める
- かんすい:中華麺に特有のアルカリ性の添加物。黄色い色、独特の香り、コシを生む
- 小麦粉:グルテンの力の強さと、原料の小麦の種類で、麺のコシと風味の土台を決める
3つは互いに影響し合うため、1つを変えると麺全体が変わります。
1. 加水率は、麺の食感の何を決めるのか
加水率とは、小麦粉の重さに対する、練り水(水にかんすいや塩を溶かしたもの)の重さの割合のことです。たとえば小麦粉1kgに練り水350gを加えれば、加水率は35%になります。
練り水が少ない低加水の生地では、小麦粉のたんぱく質が水を吸いきれず、硬く締まった生地になります。その結果、麺は歯切れがよく、ゆでたあとにスープを吸いやすくなります。反対に練り水が多い多加水の生地では、たんぱく質が十分に水を吸ってよく伸びるため、もちもちとした弾力のある麺になり、スープを吸いにくく伸びにくくなります。
| 加水率の目安 | 食感 | スープとの関係 | よく合わせられるラーメン |
|---|---|---|---|
| 低加水(30%前後) | 硬く、歯切れがよい | スープを吸いやすく、スープの味がよく乗る。そのぶん伸びやすい | 博多の豚骨など、細麺で早く食べるラーメン |
| 中加水(30%台半ば) | ほどよい弾力 | 吸いすぎず、絡みすぎない | 醤油、塩などの清湯 |
| 多加水(40%以上) | もちもちとして弾力が強い | スープを吸いにくく、伸びにくい | つけ麺、太麺の醤油ラーメン |
※加水率の区分は当サイトの「切刃番号と加水率の設計データ」「ラーメン製麺機の選び方」の記載にもとづく目安です。店や製麺所によって呼び方の基準は異なります。
※表が切れている場合は、横にスクロールしてご覧ください。
加水率は、製麺の作業のしやすさにも関わります。低加水の生地は硬いため、生地を延ばすときに製麺機のローラーやギヤに強い負担がかかり、多加水の生地はローラーに付きやすくなります。打ちたい麺によって、製麺機に求められる力や掃除のしやすさが変わるのはそのためです。
どの加水率が自店のスープに合うかを自分で選べることが、仕入れ麺にはない自家製麺の強みです。麺を自分で打てば、歯切れや弾力を少しずつ変えながら、スープに最も合う一杯を突き詰められます。
2. かんすいは、中華麺に何をしているのか
かんすいとは、中華麺に使われるアルカリ性の食品添加物です。国の規格では、炭酸カリウム(無水)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸類のカリウム塩またはナトリウム塩を原料とし、その1種類か2種類以上を混ぜたもの、またはそれを水に溶かしたものや小麦粉で薄めたものと定められています。うどんやそうめんには使われず、中華麺を中華麺らしくしているのが、かんすいです。
かんすいは、麺に3つの変化を起こします。
- 色:小麦粉に含まれるフラボノイドという色素は、本来ほとんど色がありませんが、アルカリ性の環境に置かれると分子の構造が変わり、黄色く発色する。中華麺が黄色いのはそのため
- コシ:小麦粉のたんぱく質がつくる網目の組織(グルテン)が、アルカリ性の環境で引き締まって密になり、うどんより硬く弾力のある麺になる
- 香り:アルカリ性の生地をゆでることで、小麦粉の成分が変化し、かんすい臭とも呼ばれる中華麺に特有の香りが生まれる
かんすいの成分によっても、仕上がりは変わります。一般に、炭酸カリウムが多いかんすいは麺を硬く引き締め、炭酸ナトリウムが多いかんすいはしなやかな弾力を残しやすいとされます。かんすいの量が少なすぎると中華麺らしさが出ず、多すぎると苦みやえぐみが出やすくなるため、かんすいは他の材料に比べて少ない量で、慎重に加減します。
出典:厚生労働省「食品、添加物等の規格基準」添加物の製造基準(かんすい)(2026年10月26日確認)
3. 小麦粉の選び方で、麺の土台はどう変わるのか
小麦粉は、中華麺の材料の大部分を占め、麺のコシと風味の土台を決めます。小麦粉を選ぶときの手がかりは、小麦粉のたんぱく質がつくるグルテンの力の強さです。
小麦粉に含まれるたんぱく質は、水を加えて練るとグルテンという、ねばりと弾力のある組織をつくり、麺のコシのもとになります。グルテンの量や質は、原料の小麦や小麦粉の種類によって異なり、グルテンの力が強い粉ほどコシの強い麺になります。
日本には小麦粉の公的な定義や規格はありませんが、製粉会社はグルテンの力の強弱によって、小麦粉を大きく4つに分けて製造、販売しています。
- 強力粉:グルテンの力が最も強い。パンや餃子の皮に使われる
- 準強力粉:強力粉の次にグルテンの力が強い。中華麺に使われる
- 中力粉:グルテンの力が中くらい。うどんなどの日本の麺に使われる
- 薄力粉:グルテンが少なく、質がやわらかい。菓子や料理のとろみ付けに使われる
出典:一般財団法人 製粉振興会「小麦粉の加工と製品」(2026年10月26日確認)
小麦粉は、グルテンの力だけでなく、原料の小麦の産地や銘柄によっても香りや色が違います。1種類の粉だけでなく、性格の違う2種類以上の粉をブレンドして、食感と風味を両立させる店もあります。
4. 3つの要素は、どう組み合わせればいいのか
加水率、かんすい、小麦粉の3つは、別々に決めるものではありません。たとえば同じ加水率でも、たんぱく質の多い粉は水を多く吸うため、生地の硬さが変わります。かんすいを増やせばコシは強くなりますが、加水率が低いままだと、硬くなりすぎることがあります。
組み合わせを考えるときは、まずスープを出発点にします。
- スープの濃さを確かめる(濃厚か、あっさりか)
- 麺がスープを吸ったほうがいいか、吸わずに絡んだほうがいいかを決め、加水率の方向を決める
- 欲しいコシの強さから、小麦粉の種類と、かんすいの量を決める
- 麺の太さを、スープとの絡み方で決める
麺の太さは、製麺機で麺を切り出す刃(切刃)の番号で決まります。スープの濃さ別の、切刃と加水率の組み合わせは、切刃番号と加水率の設計データで詳しく紹介しています。材料や工程の言葉の意味は、ラーメン用語集で調べられます。
5. 自家製麺の店は、3つの要素をどう使っているのか
製麺機タイセーを導入した店の麺にも、3つの要素の使い方がよく表れています。
麺屋 大斗(東京都千代田区神田)
ゲンコツや鶏ガラ、豚ガラに魚系のだしを合わせた和風醤油味のつけ麺に、ストレートの太麺を合わせています。自家製麺は2種類の小麦粉をブレンドし、加水率を高めにすることで、もちもちとした食感に仕上げています。
導入モデル:タイセーNo.3型
麺処 田ぶし 湘南台店(神奈川県藤沢市)
豚骨を主体に煮干や昆布などの魚介を加えた、魚だしのスープに合わせて、卵黄入りの黄色がかった中太麺を使っています。スープに合わせて鰹節の粉を加えるなど、加水率、かんすい、小麦粉の3つ以外の材料でも、麺をスープに寄せています。
導入モデル:タイセーNo.3型
出典:大成機械工業「導入店のご紹介」(2026年10月26日確認)
どちらの店も、スープの味を先に決め、その味に合わせて小麦粉や加水率を選んでいます。自分の店で麺を打てば、この3つの要素を自分の判断で組み合わせ、試作で確かめながら決められます。
6. 麺の設計を試す方法(製麺機タイセーの場合)
製麺機タイセーは、設計と製造を大成機械工業が、販売と導入後の教育を総代理店のキッチンテクノが担う、30年以上続く業務用の製麺機です。加水率や配合を変えた麺を、実際に打って確かめる方法があります。
- 無料のラーメン学校:キッチンテクノが東京と大阪でそれぞれ月1回、札幌で不定期に開いている1日完結の実演会。製麺機の使い方、加水率や配合や切刃の選び方を実機で学び、麺とスープを試作して試食できる
東京の会場:テンポス東京ラーメン専門館(東京都足立区東綾瀬2-1-14)
大阪の会場:テンポス大阪ラーメン専門館(大阪府大阪市住之江区北島2-1-8) - レンタル:月々62,000円からで、自分の厨房に置いて、自分のスープに合う麺を試作できる。納得してから購入に切り替える相談もできる
- 早期納品:定番のNo.2は早期納品用の在庫を用意しており、在庫があれば国内は1〜2週間で納品できる。整備済みの中古機なら、在庫があれば最短1週間で納品できる
モデルは、小規模店や少量の試作向けのNo.1、最も多くの店舗に選ばれている定番のNo.2、大量仕込み向けのNo.3の3つです。全モデルにミキサーを標準装備し、切刃#14〜#28の交換に対応しているため、太さや加水率の違う麺を1台で打ち分けられます。本体価格はNo.1が1,688,000円、No.2が1,875,000円、No.3が2,475,000円(いずれも税別、2026年10月時点)で、錆びにくく塗装のはがれがないステンレスバージョンも全モデルで受注生産を始めています(価格はお問い合わせください)。
原価の面では、仕入れ麺と自家製麺の差は1玉あたり約24円で、1日100杯、月25日営業なら年間約72万円になります(2026年10月時点、当社調査)。費用の詳しい考え方は、自家製麺は「買う」と「借りる」どっちが得?で解説しています。
7. よくあるご質問
加水率は、どうやって計算しますか?
かんすいの代わりに、重曹を使えますか?
出典:厚生省通知「製めん業者が自家使用を目的として調製・製造するかんすいの取扱いについて」(昭和56年12月15日 環食化第68号)(2026年10月26日確認)
季節によって、加水率を変えたほうがいいですか?
仕入れ麺を選ぶときにも、この知識は役立ちますか?
加水率、かんすい、小麦粉の3つがわかれば、麺を「なんとなく」ではなく、スープとの相性で選べるようになります。次に麺を選ぶときは、今のスープに足りないのが、歯切れなのか、コシなのか、絡みなのかを考えてみてください。
加水率や配合を変えた麺を、実際に打ってみませんか
東京と大阪で毎月開いている無料ラーメン学校では、実際の製麺機で、加水率や配合や切刃を変えた麺を打ち、スープと合わせて試食できます。麺を打ったことがない方も参加できます。自分の厨房でじっくり試したい場合は、月々62,000円〜のレンタルで、スープに合う麺を実際に打ちながら確かめられます。機種選びのご相談は無料です。