製麺所から、来月から麺の単価を上げさせてほしいという連絡が来た。小麦粉も、配送のトラック代も上がっていると言われれば、断る理由も見つからない。かといって、一杯の値段を上げれば常連さんが離れるかもしれず、据え置けば利益が削られていく。

仕入れ麺の値上げを告げられたとき、ラーメン店が取れる手は一つではありません。製麺機メーカーの大成機械工業が、仕入れ麺が値上がりする理由と、店が取れる3つの選択肢を、それぞれの向き不向きとあわせてまとめました。

仕入れ麺の値上げに対して店が取れる選択肢は、主に次の3つです。

  • 売価に反映する:一杯の値段を上げて、上がった原価を吸収する
  • 仕入れを見直す:製麺所との条件の相談、別の製麺所の見積もり、麺の仕様の見直しで、原価の上昇を抑える
  • 自家製麺に切り替える:麺を自分の店で打ち、製麺所の利益と配送の費用を原価から外す

どれが合うかは、1日の杯数と、麺で他の店と差をつけたいかどうかで分かれます。

1. 仕入れ麺はなぜ値上がりしているのか

仕入れ麺の値段には、小麦粉などの原料のほかに、製麺所が麺を作る費用と、店まで運ぶ費用が含まれています。値上げの理由は、そのどれか一つではなく、いくつかが重なっていることがほとんどです。

  • 小麦粉の価格:日本で使う小麦の多くは輸入品で、国が輸入小麦を製粉会社に売り渡す価格(政府売渡価格)は、国際的な小麦の相場や為替を反映して、年2回(4月期と10月期)改定されます。この価格が上がると、小麦粉の価格を通じて麺の原価に響きます
  • 物流の費用:2024年4月から、トラックの運転手など自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用されました。上限は原則として月45時間、年360時間で、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間までです。運転手1人あたりが運べる量に上限ができたことで、運送の費用が上がりやすくなっています。毎日配送される仕入れ麺は、この影響を受けやすい商品です
  • 製麺所の人件費と光熱費:麺を作る人の賃金や、機械を動かす電気代の上昇も、麺の単価に乗ります

出典:農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格」、厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」(いずれも2026年10月26日確認)

どの理由も、店の努力だけでは止められないものです。そのため、仕入れ麺を使い続ける限り、値上げはこの先も起こりうると考えておくほうが現実的です。

2. 麺の値上げで、店の利益はどれだけ減るのか

麺の値上げが利益に与える影響は、1玉あたりの値上げ幅と、1日の杯数の掛け算で決まります。1玉あたり数円の値上げでも、毎日使う材料なので、1年で見ると大きな金額になります。

計算例(1日100杯、月25日営業の店で、仕入れ麺が1玉あたり5円上がった場合)

  • 1か月:5円 × 100杯 × 25日 = 12,500円
  • 1年:12,500円 × 12か月 = 150,000円

売価を据え置くと、年間15万円の利益がそのまま消えます。値上げ幅の5円は計算のための仮の数字なので、実際に告げられた値上げ幅に置き換えて計算してください。

大盛りや替え玉のある店は、1杯あたりの麺の量が増えるぶん、影響もそれに比例して大きくなります。

3. 店が取れる3つの選択肢

仕入れ麺の値上げに対して店が取れる3つの選択肢には、それぞれ向き不向きがあります。

選択肢 主な利点 主な注意点 向いている店
売価に反映する 設備も手間も増えない。すぐに始められる 客足が落ちるおそれがある。仕入れ値が上がるたびに、同じ判断を迫られる 味やサービスに常連さんがついていて、値上げを受け入れてもらいやすい店
仕入れを見直す 今の厨房のまま取り組める。麺の仕様の見直しは味の見直しにもなる 相談しても値上げを止められるとは限らない。製麺所を変えると、麺の味や食感も変わる 今の麺に強いこだわりがなく、条件のよい製麺所が近くにある店
自家製麺に切り替える 製麺所の利益と配送の費用を原価から外せる。麺で他の店と差をつけられる 機械の費用、置き場所、毎日の製麺の時間が要る。技術を覚えるまでに試作の期間がかかる 杯数が多い店、麺で差をつけたい店

※表が切れている場合は、横にスクロールしてご覧ください。

売価に反映する

売価への反映は、設備投資なしで原価の上昇を吸収できる、最も手早い方法です。麺の値上げ分だけなら、一杯の値上げ幅は小さく済むこともあります。

ただし、売価の改定は仕入れ値が上がるたびに繰り返すことになり、そのたびに客足への影響を心配することになります。値上げに合わせてトッピングや麺の量を見直し、お客さまが納得できる理由をつくる店もあります。

仕入れ先や麺の仕様を見直す

仕入れの見直しは、今の厨房を変えずに取り組める方法です。製麺所に値上げの理由と時期を確かめたうえで、条件を相談する余地があるかを聞いてみます。別の製麺所から見積もりを取れば、今の単価が相場に比べて高いか安いかもわかります。

麺の仕様を見直す方法もあります。1玉の重さや、使う小麦粉の種類を変えれば、単価を抑えられる場合があります。一方で、仕様を変えれば食感や味も変わるため、常連さんに気づかれない範囲かどうかを試食で確かめる必要があります。

自家製麺に切り替える

自家製麺への切り替えは、値上げの原因そのものから距離を置く方法です。仕入れ麺の1玉に含まれる製麺所の利益と配送の費用が原価から外れるため、値上がりの影響を受けるのは、自分の店で使う小麦粉などの材料と電気代の分に限られます。

自家製麺には、原価のほかにもう一つの利点があります。自分のスープに合わせて、麺の太さ、加水率、配合を決められることです。値上げをきっかけに、麺で他の店と差をつけることもできます。

自家製麺の味の利点をもっと知りたい場合

4. どの選択肢が合うかを決める目安

3つの選択肢のどれを選ぶかは、次の3つの問いへの答えでおおよそ決まります。

  1. 1日に何杯出しているか:杯数が多いほど、1玉あたりの差が大きな金額になり、自家製麺の費用を回収しやすくなる
  2. 麺で他の店と差をつけたいか:差をつけたいなら、仕入れ麺の範囲での見直しより、自家製麺のほうが自由度が高い
  3. 製麺の場所と時間を確保できるか:機械の置き場所と、毎日の製麺の時間が取れないなら、自家製麺は現実的ではない

3つ目の問いに「いいえ」と答えるなら、売価への反映と仕入れの見直しを組み合わせるのが現実的です。逆に、杯数が多く、麺で差をつけたい店ほど、自家製麺を検討する価値があります。選択肢は一つに絞る必要もなく、まず仕入れを見直して時間を稼ぎ、その間に自家製麺を試す店もあります。

5. 自家製麺に切り替える場合の費用の考え方

自家製麺の費用は、機械の費用と、1玉あたりの原価の差を比べて考えます。当社の調査では、仕入れ麺が1玉あたり約40〜50円、自家製麺なら約18〜26円です(2026年10月時点、当社調査)。

計算例(1玉あたりの差を約24円、1日100杯、月25日営業とした場合)

  • 原価の差:24円 × 100杯 × 25日 = 月60,000円、年間約72万円
  • レンタル(月々62,000円から)で始めた場合:1日100杯では、原価の差とレンタル料がほぼ同じになる
  • 小型機を購入した場合:タイセーNo.1の本体価格1,688,000円(税別)を、年間約72万円の差で割ると、約2年4か月で本体価格に届く

いずれも機械の本体とレンタル料だけの計算で、電気代、材料の準備や製麺にかかる人の時間、修理の費用は含みません。

レンタル料と原価の差を比べると、レンタルは長く使って利益を出す方法というより、自分の厨房とスープで自家製麺を試すための方法だとわかります。長く使うなら購入のほうが有利になりやすく、杯数が多い店ほど回収は早まります。月間の杯数別の試算は仕入れ麺から「タイセー」へ切り替えたときの手残り利益、導入方法の比較は自家製麺は「買う」と「借りる」どっちが得?で解説しています。

導入店の例:麺屋 大斗(東京都千代田区神田)

東池袋の『大勝軒』の流れを汲むつけ麺の店で、2種類の小麦粉をブレンドし、加水率を高めにしたストレートの太麺を毎日自分の店で打っています。14坪の小さな店ですが、場所を取らない製麺機を使うことで店の中での製麺を可能にし、特徴のある麺を低コストで作っています。

導入モデル:タイセーNo.3型(出典:大成機械工業「導入店のご紹介」、2026年10月26日確認)

6. 自家製麺を試す方法(製麺機タイセーの場合)

製麺機タイセーは、設計と製造を大成機械工業が、販売と導入後の教育を総代理店のキッチンテクノが担う、30年以上続く業務用の製麺機です。いきなり機械を買わずに、自家製麺が自分の店に合うかを確かめる方法があります。

  • 無料のラーメン学校:キッチンテクノが東京と大阪でそれぞれ月1回、札幌で不定期に開いている1日完結の実演会。実機で麺とスープを試作し、その場で試食できる
    東京の会場:テンポス東京ラーメン専門館(東京都足立区東綾瀬2-1-14)
    大阪の会場:テンポス大阪ラーメン専門館(大阪府大阪市住之江区北島2-1-8)
  • レンタル:月々62,000円からで、自分の厨房に置いて試せる。納得してから購入に切り替える相談もできる
  • 早期納品:開店が迫っている場合、定番のNo.2は早期納品用の在庫を用意しており、在庫があれば国内は1〜2週間で納品できる。整備済みの中古機なら、在庫があれば最短1週間で納品できる

モデルは、小規模店や試作向けのNo.1、最も多くの店舗に選ばれている定番のNo.2、大量仕込み向けのNo.3の3つで、全モデルにミキサーを標準装備しています。本体価格はNo.1が1,688,000円、No.2が1,875,000円、No.3が2,475,000円(いずれも税別、2026年10月時点)です。錆びにくく塗装のはがれがないステンレスバージョンも全モデルで受注生産を始めています(価格はお問い合わせください)。

7. よくあるご質問

製麺所の値上げは、断ることができますか?
値上げを受け入れるかどうかは、店と製麺所の取引の条件しだいです。受け入れない場合は、別の製麺所に切り替えるか、自家製麺に切り替えることになります。製麺所を変えると麺の味も変わるため、まず値上げの理由と時期を確かめ、条件を相談する余地があるかを聞いてみるのが現実的です。
麺の値上げ分だけ、一杯の値段を上げてもいいですか?
売価を上げるかどうかは店の判断ですが、麺だけでなくスープの骨や光熱費も上がっている場合は、麺の分だけ上げても利益は戻りきりません。材料ごとの値上げ幅を一度書き出し、一杯の原価がいくら上がったかを確かめてから決めるほうが確実です。
自家製麺にすれば、小麦粉の値上げの影響は受けませんか?
自家製麺でも、小麦粉が値上がりすればその影響は受けます。自家製麺で原価から外せるのは、製麺所の利益と配送の費用の分です。
自家製麺に切り替えると決めてから、麺を出せるまでにどのくらいかかりますか?
自家製麺に切り替えるまでの期間は、機械の手配と、麺の試作にかかる時間で決まります。製麺機タイセーの場合、定番のNo.2は早期納品用の在庫を用意しており、在庫があれば国内は1〜2週間で納品できます。No.1とNo.3の新品は受注生産のため納品まで数週間からかかり、整備済みの中古機なら在庫があれば最短1週間で納品できます。操作の基本は無料ラーメン学校の1日で学べますが、自分のスープに合う麺に仕上げるには、試作を重ねる期間を見込んでおく必要があります。

仕入れ麺の値上げは、店が麺の仕入れ方を見直すきっかけにもなります。まずは告げられた値上げ幅で年間の影響額を計算し、3つの選択肢のどれが自分の店に合うかを考えてみてください。

自家製麺が自分の店に合うか、一度試してみませんか

東京と大阪で毎月開いている無料ラーメン学校では、実際の製麺機で麺とスープを試作し、その場で試食できます。1日の杯数と今の仕入れ単価をお知らせいただければ、自家製麺に切り替えた場合の試算もお出しします。